院長メッセージ
『医療スタッフの行動制限 ―経済再生とコロナ感染症の両立を目指して―』
2020年10月
急に秋めいてきた今日この頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか。
秋の観光シーズンです。今月より政府主導のGO toキャンペーンに東京発着が追加され、ニュース等では浅草や箱根等に観光客が戻りつつあると報道されています。大打撃を受けている観光業等にやっと光が見えた状況の様です。
今回の新型コロナ感染症は経済活動の停滞を引き起こし、日本経済に大きなダメージを与えています。神奈川県では来年度1100億円の税収減で投資計画に変更が求められていると報道されました。皆さんもご存じの通り、このような状況は世界中で起こっています。現在各国政府は、経済活動の回復とコロナ感染症対応の両立を目指し、種々の政策を実施しています(仏では公共交通機関の混雑緩和のため自転車の修理・購入に補助金が出るようです)。以前、院長メッセージで「コロナ感染症の拡大を防ぐには行動制限が必須」と書きました。この点からGO toキャンペーンに疑問符をつける方もいるようです。しかし人々の行動制限を長期に実施した場合、その影響は経済だけに留まらず、教育や文化活動等々多方面に及び深刻な社会問題を生むと考えています。では日本での両立方策は何でしょうか。
日本には高度な医療システムがあります。これが保たれれば人々の行動制限をせずコロナ感染症と両立ができると考えています。半年前には手探りであったコロナ感染症対応ですが、現在は対応法が明らかとなり、治療法も格段に進歩しています。緊急事態宣言が出た第一波より、いわゆる第二波の方が総患者数は多いですが、皆様の行動制限を実施しなくて良い理由はここにあります。どんな状況でも「医療体制を保つ」がキーポイントです。
これには医療者の「行動制限」が必須です。つまり「医療者が感染源にならない」「院内にコロナウイルスを持ち込まない」、そして無症状の陽性者がいる疾患ですので、たとえ持ち込んでも「濃厚接触者(14日間の勤務禁止)にならない」これが重要です。現在当院ではスタッフに、三密が生ずるような場所への外出禁止、各部門での会食等の禁止、院内では必ずマスク着用(ユニバーサルマスキング)、適切な防護具を使用という基本的行動に加え、昼食時の対面や会話制限、時間差を考えた休憩等を実施しています。
医療者が行動制限し医療を守れば、一般の方々の行動制限は解除できます。これが今後続くコロナ感染症との付き合い方と考えています。
地域の皆様にお願いがあります。マスクや手指衛生等の感染予防に加え、適正な通院や外出を行い「持病を悪化させない」、「体力を保ち感染しても重症化しない」を実践いただきたいと考えます。
インフルエンザの流行時期である冬が近づいています。インフルエンザの総患者数は、推計800~1200万人とコロナ感染の100倍規模です。すべての発熱者にコロナ感染症と同等の扱いを行うと、医療システムに過負荷が生じ「医療崩壊」に至ります。
現在行政主導で、発熱者を地域診療所や病院で分担して診療する体制の構築を行っています。当院は高度医療機関として重症者の入院機関としての役割が主となります。発熱等の症状が出た場合はまずはかかりつけ医にご相談をお願いいたします。