院長メッセージ
『感染が拡大しています! ―ハンマーとダンスについてー』
2020年12月
初冬らしい気温となってきました。コロナ感染症は気温低下と人口密度上昇により増加する、との報告が米国から出ましたが、これに合わせるように日本でも感染状況が悪化しています。当院でも院内での3密回避、無症状陽性者の立ち入りを防ぐため、11月末より原則面会禁止としました。ご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。
10月の院長メッセージは、経済ダメージを防ぐため医療が保つなら積極的に行動し、GO toキャンペーンにも賛同しよう、という内容でした。ではこれは間違いなのでしょうか。言い訳みたいで申し訳ありませんが、追加情報をお知らせします。
このコロナウイルスとの闘いは長期間になると考えられています。(ワクチンはウイルスをなくすわけではない:WHOテドロス事務局長)この時大事なのは、感染状況と経済対策の両立をいかに図るかという事です。長期間の行動制限は国の経済を破綻させ、別の問題を生ずることは前回も記載した通りです。ではこの解決策は何なのでしょうか。
ハンマーとダンス(The Hammer &The Dance)という概念があります。感染症の疫学から導かれた概念です。患者数が急増すると医療体制がひっ迫することになり(感染者数を示すグラフ[以下グラフ]では急上昇曲線)、この時様々な対応策(ハンマー:感染を抑える処置)を行うと、患者数が減り医療は保たれます(グラフは横ばいから降下する、世界中で言われる「カーブを下げろ」Flattening the Curve)。ただ感染者数は0になることはありません。感染者数は一定のところで穏やかに上下をします(グラフでは緩やかな上下波、ダンス)。つまり感染者数のグラフを見ながら、「叩く」処置を実施するハンマー期と経済活動を重点に実施するダンス期に分け対応する必要があります。これで、解決策が見えてきます。
つまり、早期に感染者数の増加の兆候を見つけ、小さなハンマー(社会的に影響の軽い対策)でダンス期に戻すことがキモです。残念ながらこの冬、ヨーロッパや米国では対処が遅れたため、再度のロックダウンという「巨大なハンマー」が必要となっています。日本でも、GO toキャンペーンにこの考え方が導入されていなかった事で、ある面、後手に回ったように感じます。しかし日本の大部分の地域においては「小さいハンマー」でまだ対応できる状況だと考えます。皆さんも地域の感染状況を見ながら、この「小さいハンマー」(あの地域は危ない、3蜜を避けよう等の行動制限)は実施していただけると助かります。
現時点では幸いなことに、この冬最大の懸念事項であったインフルエンザとの同時流行(ツインデミック)は認められません。例年ならこの時期数千人/週のインフルエンザ患者が出るはずですが、今年はなんと横浜市では0-1人/週、全国でも数十人/週規模という報告です。マスク、手洗い、外国人の入国制限等が影響していると考えますが、今後もこの状況が続くことを願っています。
感染の拡大とともに病院の入院患者さん方も減少しています。持病の悪化は重症疾患の発症の原因となります。ぜひ適正な受診、治療をお願いいたします。