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院長メッセージ

『コロナワクチン接種について ―当院の地域における役割―』 

2021年05月

 医療者向けワクチン先行接種が始まって2か月、横浜では多くの病院や診療所の先生方を対象にワクチン接種が本格的に実施されています。今後地域の医療・介護関係者等にも拡大されます。さらに65歳以上向け優先接種が本格的に開始となり、やっとコロナ感染症終息の光が見え始めたように感じています。
 残念ながら、日本はワクチン接種が遅れていることが報道されています(先進国中最下位!)。その中でも神奈川県は遅れた状況でしたので、やっと解消に向けての動きが始まった事は喜ばしい事です。

 世界を見渡すと、感染が広がった国ほどワクチン接種が早く進む傾向にあるようです。コロナパンデミックで複数回のロックダウンを実施した英国では、現在100万件/日のワクチン接種が実施されています。ただその接種体制は、国が接種優先度や日程を決め、問診や接種部位の消毒もなく、医療者でない人が接種するという乱暴なものです。逆にワクチンなしでコロナ感染症のリスクを低く抑えている国ほど、接種が遅れているようです。
 日本は昨年度の「超過死亡」がマイナス(予測される年間死亡者数より少ない、欧米では大幅増加)という世界でもまれな国です。これは人々がコロナ対策に熱心に取り組んだ結果、インフルエンザ等の感染症が減ったためと考えています(昨年度当院インフルエンザ患者0人)。しかし人々の行動制限を解除するためには、多くの人にワクチンを接種し、集団免疫を得る必要があります。つまり、ワクチン接種体制の整備が今後のコロナ対策の最優先事項であることは間違いありません。横浜市でも集団接種や個別接種会場を増やす事が検討されており、当院スタッフも協力する予定です。

 当院にも「ワクチン接種を実施しないのか」「国の病院なら地域住民に接種すべき」等の声が届いています。当院の役割を考えると、一般の方々へのワクチン接種は現時点では難しい状況です。これについて説明いたします。
 英国と異なり、日本でのワクチン接種は非常に手間がかかります。接種者に合わせた予約システムの運営、3密を避けた動線の確保、問診票記載事項確認と検温・本人確認、医師による問診、医師または看護師による接種、接種後15-30分の待機等が必要で、総勢30名以上の医師・薬剤師・看護師・事務職等がかかわり、多くのスペースが必要です。この体制で医療者の接種でも100人/h程度しか実施できません。一般の方々への接種には、さらに手間がかかる事が予測されます。横浜市でも個別接種医療機関が公表されたとたんに、施設の電話が鳴り続け、通常業務に影響が出た事から、施設名公表や接種自体を中止した病院・診療所が出ています。もし、当院で地域の方々への接種を行うのであるなら、通常診療制限や救急患者の受け入れ制限を実施せざるを得なくなり、当院の機能が保てなくなります。
 これまで、当院はこのコロナ過でも通常診療体制を保ってきました。現在もコロナ感染症患者はもとより、それよりも患者数が多い各科重症症例に中核施設として高度医療を提供しています。いつでも何処ででも高度な医療を受けられる、という日本が持つ優れた医療供給体制をコロナ関連業務で崩すこと、これが「医療崩壊」です。この体制を維持する事が当院の役割です。このことをご理解いただき、コロナワクチン接種は、集団接種会場や近隣の個別接種医療機関でお受けいただく様お願いいたします。

 ワクチン接種には月単位の日数がかかります。また「打ったら安心」ではありません。感染や重症化予防の抗体が出来るまで2週間程度かかる、と言われています。接種後も3密を避ける行動をとる、常にマスクをする、手指衛生に心がける等、感染予防行動を実践していただきます様お願いいたします。



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