院長メッセージ
『社会や生活に変革が求められる時代』
2021年09月
新型コロナウイルスデルタ変異株(L452R変異)が猛威を振るっています。当院は横浜市内でも有数の重症者受け入れ施設で、良好な治療成績を上げています。現在当院は、通常診療とコロナ感染症対応の両立を目指し一部病床制限を実施しています。通院や入院は通常と同等レベルの体制を維持していますので、ぜひ高度医療が必要な場合、当院を紹介受診していただくようお願いします。
今回のコロナ感染症第5波ですが、特徴的なのは患者の若年化です。ワクチン接種が進んでいる高齢者の重症例は明らかに減少しています。米国では州医師会連合会が「ワクチンの誤報を広めた医師は医師免許が危うくなる」と警鐘を鳴らし、ワクチン接種に反対する勢力を抑えています。日本でもワクチン接種に懐疑的な医療者と、それを肯定的に報道するマスコミがいます。「言論の自由」は否定しませんが「人々の利益」優先は別の意味で必須です。リスクを過大評価、有効性を過小評価する報道等で、重症化する可能性がある感染症の予防機会を奪っているのは納得できません。ぜひ接種可能な方は適切に予防接種をお受けいただけるようお願いします。(申し訳ありませんが当院ではワクチン接種は実施しておりません)。
ところで、今年は「異様な夏」だったように感じています。豪雨災害や雨続きのお盆期間等、かつて「異常気象」と呼ばれた気候は「日常化」している様に感じます。さらに世論の賛否両論がある中、オリンピック、パラリンピック、甲子園夏の高校野球大会等、コロナ感染症流行前と同等のイベントが行われました。個人的には、自粛が求められる状況でしたので、この夏の状況を見ていると「異様な夏」という感覚に陥った方も多いのではないでしょうか。
先月新聞に『「モダン」の生き方 棚卸しを』(神里達博千葉大教授、朝日新聞8/27)というオピニオンが掲載されていました。「この近代という時代の生き方、いわば「モダンの作法」が通用しなくなったように見える。物質的豊かさや清潔な暮らし、思想や経済活動の自由は素晴らしいが、いずれもどこかに「ガタ」が来ている。新しい時代に向け「取捨選択」が必要ではないか」との内容です。これに全面的に賛同するわけではありませんが、現代の大量消費社会に変革期に来ていることは間違いないようです。
現在のコロナ感染症が、季節性インフルエンザの様にコントロール可能な感染症となる日はそう遠くないと考えます。ただ、ポストコロナ時代はこの現代型社会や生活そして医療にも変革が必要になると考えます。莫大な税金を投入する医療や介護、環境を考えない化石燃料消費とカーボンニュートラル問題、今後さらに進歩する情報通信機器の影響、米中の覇権争いに代表される世界情勢の混乱、人の活動範囲の拡大に伴う新規感染症の発症等々、様々なリスク因子が複雑に絡みあい、社会に大きな影響を与える事が考えられます。
私も今後に向け、何をすべきか考え始めています。しかし退任が決まった菅首相と同様、まずはこのコロナ禍を抜け出すことが第一です。今回の新型コロナ感染症は、すべての人に生活の変革を求めています。感染予防(マスクや手指衛生等)と行動制限、そして積極的なワクチン接種が、社会を変える始まりになると考えます。皆様のご協力をお願いいたします。