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院長メッセージ

『病院のデジタル変革元年』

2021年11月

 8月最終週をピークとして猛威を振るった新型コロナウイルス感染症第5波は、突然とも言える感じで静穏化しました。現在緊急事態宣言解除から一月以上経っていますが、新規患者数が増える傾向を見せず、これまでの波とは異なる状況です。ワクチン接種による集団免疫作用だけでは説明できないと感じていましたが、デルタ株の遺伝子修復機能低下による自己死滅という調査結果(国立感染症研究所)が出た事で、この2つの要因だと考えています。
 ただワクチン接種後の感染(ブレークスルー感染)や抗体価の減少、新たな変異株の出現等々も考えられますので、今後もマスクや手指衛生等の対策は必要です。さらにこの状況の継続には、ワクチン3回目接種 (2回接種8か月後が目安)が有効と考えます。ご協力よろしくお願いします。
 さて、「日本はデジタル後進国」と言われます。人々が常にスマートフォンから目を離さないこの時代、なぜ「後進国」なのでしょうか。
 各国や大企業では急速にデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション・DX)が進み、業務の効率化とともに集積されたデータがコロナ対応を含め様々な場面で使われています。日本はどうでしょうか。保健所はコロナ感染者情報を収集しますが、このデータを他部門が使う事は法的に出来ません。優れた公的医療制度を持ちますが、国民一人一人の疾患名や内服薬等のデータベースは持たないため、ワクチン優先接種順位付けはアナログ方式で、対応に混乱があった事、経験された方は多いと思います。
 日本では、業務効率化に役立つデジタル技術や集積したデータ活用は、雇用減少問題や法的問題等があり、積極的な推進は出来なかった様です。これが「後進国」と言われる要因だと考えます(退任した菅首相は「デジタル庁」を設立、デジタル化推進に舵を切りました)。では同様にデジタル化が遅れている医療分野は今後どうなるのでしょうか。
 先日AI(人工知能)ホスピタルプロジェクト長、中村祐輔先生(本年度文化功労者)の講演を聴講しました。「急速に高度化・複雑化・多様化している現在の医療において、クラウド上に医療・DNA情報等の医療データベースを構築すれば、国の命運を握る「資産」となる。AIを活用しこのデータベースから画期的新薬や診断法等の開発が見込まれる。さらに適正な個人情報保護の元での医療データベースの活用は、医療現場の負担軽減と医療の質の向上、そして今回の様な新規感染症発生や災害時に大きな役割を果たす」との事でした。
 確かに、仮想ドクターやAIロボットによる初期診療や各種説明、クラウドデータベースとAIを利用した適切な診断と治療の検索、地域の被災時の対応等々、医療のデジタル化が進めば今より効率的で質の高い医療が、どんな場面でも提供できると考えます。ただ、医療情報は究極の個人情報ですので、個々の病院で対応する事は難しく、今後のデジタル庁の活動に期待をしています。
 当院は今年度をデジタル変革元年と位置付け、まずは出来るところから変革を開始しました。これまで院内デジタルサイネージや、電子会議システムさらには自動環境滅菌装置の導入 (簡易ロボット型機器、看護師による拭き上げ業務を削減)を実施、10月からは患者さん用のWIFI環境整備を行いました(外来及び病棟で使用可能)。日本のがん治療拠点病院でのWIFI導入率は3割程度と報道されております。今後、遠隔面会や各種連絡・情報収集等、有効に利用していただくようお願いします。
 当院は今後もデジタル技術を生かした医療プロセスの効率化や患者サービスの向上を目指していきたいと考えています。今後とも当院をよろしくお願いいたします。



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