院長メッセージ
『給付金関連事件から感じる事』
2022年7月
気象庁が梅雨明け宣言を出しました(6/27)。観測史上最も早い梅雨明けです。準備が十分でないうちに暑い季節が来た様に感じます。近年「史上初」が多発しています。地球規模の温暖化の影響でしょうか。CO2削減は待ったなしの様です。
今年は公共料金の急速な上昇(当院でも月の支払額が倍です)と電力の供給不足により、節電は必須です。ただ熱中症予防のため適切なエアコン使用も必須です。さらに政府からメッセージが出ているように、屋外で密集や会話が無い場合、積極的にマスクを外すことも必要です。当院も各部署で節電に取り組むとともに、駐車場・屋外での業務ではマスクをしない方針です。ご了解をお願いします。
ところで、先月はコロナ持続化給付金詐欺が大きく報道されました。国税局の若手職員まで関与している前代未聞の事態です。また給付金誤振込事件では5千万近い入金を受けた24歳男性が、オンラインカジノ(今回の報道で初めて知りました)で大部分を失った事も大きく報道されました。
これら給付金の原資は国の借金であり、結局はすべての国民が負担するものです。適正な給付が必須です。医療界にも多くの給付金が来ました。国が準備したコロナ対策用資金の1/10が医療向けと言われています。ちなみに当院は4月に給付金受給に関し国の機関による調査を受け、問題点は無いと判断されています。
話を戻しますが、この複数の事件で気になる事は、犯罪行為にかかわっている人物の多くが20代の若者であるという点です。当然、容疑者個人の公共意識の薄さやインターネット上で簡単に申請処理やオンラインカジノが出来る事等が最大の要因とは思いますが、この背景にはかなり根深いものがあると考えています。
NHKが若者1万人にアンケート調査を実施した内容が5月に放送されました(NHKスペシャル5月7日)。「1つだけ願いが叶うとしたら何を望むか」で最も多い回答は「お金が欲しい」でした。私も若い時「あれもこれも欲しい」等、一時の物欲に駆られましたが、今の若者の事情は少し異なるようです。若者が「お金が欲しい」最大の理由は、「将来の安心のため」でした。派遣社員の増加、給与水準は上がらず社会保障負担は増える、さらに最近の物価上昇等、確かに将来の安心感が減っている事は否めません。今回の給付金事件も、日本の未来に対する若者たちの不安感が裏にあるように感じています。
実は医療も例外ではありません。日本経済新聞は最近1面で「医療再建」という記事を出しました。「日本の医療が少子高齢化を乗り越えるには負担と給付の発想を転換する必要がある」「負担の全世代型改革をしないと、現役世代の苦境はさらに深刻になる」(6月24日)。今の若者たちの不安感は現実であることを認識させられます。
すべての世代が適正な医療を適正な負担で受けられる体制を保つためには、現在の年齢と収入だけの基準でなく、給付の対象から負担の在り方まで変える必要があると考えています。