乳がん
診療科の特徴
乳腺外科では乳腺疾患を対象に乳腺専門医1名(女性)、乳腺認定医2名、一般外科医師のチームで診療をおこなっています。診療ガイドライン及び最新の知見に基づき、患者さん一人ひとりに寄り添った治療を提供することを心がけています。また、乳腺外科医だけではなく、病理医、放射線治療医、形成外科医などの他科の医師や緩和ケアチーム、がん専門薬剤師、がん化学療法認定看護師、WOCナース、放射線技師など多職種で連携して治療を行っています。
対象疾患
乳がん、乳腺良性腫瘍(繊維腺腫、葉状腫瘍など)、乳腺炎、女性化乳房症など
検査内容
マンモグラフィー ※トモシンセシス(3Dマンモグラフィー)
乳房超音波(乳房エコー)
乳房針生検、細胞診
エコーガイド下マンモトーム生検、ステレオガイド下マンモトーム生検
CT、MRI、骨シンチグラフィーなど
・マンモグラフィーや乳房超音波で生検が必要と判断した場合、基本的には初診日に生検をおこなっています。
・乳がんと診断された患者さんのうち、家族歴などの条件に適格する方には希望に応じてBRCA(*1)検査もおこなっております。結果が出るまでに3週間程度要します。
*1 BRCA:乳がんの発症に関係する遺伝子変異で一番代表的なものです。BRCA遺伝子変異を認めた場合、通常の方より高い確率で乳がん・卵巣がんを発症するため、健側乳房の予防切除や卵管卵巣摘出術を行うことがあります。また、PARP阻害薬という標的治療薬を使用することもあります。
乳がんについて
乳がんの治療については乳癌診療ガイドラインを元に最新の知見を取り入れておこなっています。当院乳腺外科では保険適応外の診療は行っていません。
治療内容
① 手術
乳がん患者さんの手術は乳房の手術と腋窩(脇のリンパ節)の手術を組み合わせて行います。乳房の手術は乳房部分切除術と乳房全摘出術のいずれかを行います。部分切除を行った場合は原則として放射線治療の併用が必要です。腋窩の手術は、臨床的に腋窩リンパ節転移がない方に対して行うセンチネルリンパ節生検(*2)、もしくは腋窩リンパ節に転移のある方に行う腋窩郭清(脇のリンパ節を切除する手術)のいずれかを行います。
乳房全摘出術を行った患者さんへの乳房再建術(*3)(乳房人工物再建)についても、当院形成外科医と連携して行っております。
*2 センチネルリンパ節生検:センチネルリンパ節とは癌が最初に転移するリンパ節をさします。ラジオアイソトープと色素を併用してセンチネルリンパ節を同定し、そのリンパ節に癌の転移がなければ他のリンパ節にも転移はない(さらに広範囲のリンパ節切除は不要である)という考え方のもとで行う標準治療です。センチネルリンパ節への癌の転移の有無については手術中に病理診断医によって診断されます。転移があった場合は腋窩郭清に移行することがあります。
*3 乳房再建術:乳がん術後の乳房再建術には、人工物(シリコンインプラント)による再建と、自家組織による再建の2種類があります。また、乳がんの手術と同時に行う(1次再建)と乳がんの治療が落ち着いてから行う(2次再建)という手術時期の選択も可能です。
乳房再建術にはメリット・デメリットがあり、病期によっては行えないこともありますので、主治医と良く話しあった上で検討することが重要です。
当院は日本乳房オンコプラステックサージャリー学会より、エキスパンダー/インプラント実施施設の認定を受けています。乳房再建をご希望の方は、主治医にお伝え下さい。
入院期間は術式により異なり、乳房部分切除の場合4泊5日、乳房全摘出術の場合7泊8日間、腋窩郭清を行った場合や乳房再建を行った場合は2週間程度の入院です。
手術待機時間は3~4週間となっています。
良性腫瘍の手術
局所麻酔もしくは全身麻酔下で腫瘍摘出術を行います。
局所麻酔の場合は日帰り、全身麻酔の場合は3-4日の入院です。
② 薬物治療
乳がんのタイプやステージに応じて抗がん剤や分子標的薬、ホルモン治療薬などを組み合わせて治療を行います。
抗がん剤治療は初回のみ入院(外来も可)で行い、以降は外来で行います。実際の治療は当院2階の化学療法室で行います。現在当院の化学療法室は13床あり、乳腺外科のほかにも複数の診療科の患者さんが治療を行っています。仕切られた空間でリクライニングチェアに座った快適な状態で治療を受けていただくことができます。
③ 放射線治療
乳房温存手術であった場合や腋窩リンパ節に多数の転移を認めた場合は温存乳房や胸壁・鎖骨上リンパ節に放射線照射を行います。温存乳房への照射については、従来よりも1回の線量を増やして回数を少なくする寡分割照射(25回→16回に短縮)も積極的に行っています。また、骨転移などの転移巣に対する症状緩和目的での放射線照射も行っています。