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胃がん


胃の解剖



胃がん治療ガイドラインの解説(日本胃癌学会編、金原出版)から抜粋

胃は上腹部のやや左側にある袋状の臓器です。
胃の周りには、肝臓や胆嚢、膵臓や脾臓、大腸があります。
食道から胃への入り口を噴門(ふんもん)、胃から十二指腸への出口を幽門(ゆうもん)と言います。

胃壁は、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜から成っています。

胃がんとは

胃がんは、胃の内側の粘膜から発生し、大きくなるにしたがい胃壁の外側に向かって深く入りこんでいきます。胃壁を突き抜けると、近くの膵臓や大腸など他臓器に広がったり、腹膜にがん細胞が散らばったりします。

胃がんの発生については、塩分の多い食品の過剰摂取や野菜・果物の摂取不足、喫煙、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染などが、リスクを高めると指摘されています。
胃がんは、40歳後半以後から増加し、全がんの中で死亡数は、男性は2位、女性は3位ですが、死亡率は以前より減少しています。

胃がんの症状

早期がんでは、無症状のことが多いです。進行がんになると、上腹部不快感、上腹部痛、悪心・嘔吐、げっぷ、胸やけ、腹部膨満感、吐血、下血、貧血、体重減少、嚥下困難などが出現します。

胃がんの診断

自覚症状や胃X線検査による検診で胃がんが疑われたら、精密検査として内視鏡検査を行い、胃の内部を直接観察します。病変の場所や胃内の広がりを調べ、組織を採取して(生検)、病理検査で胃がんと確定診断します。

胃がんの深さや転移の有無を診断する検査として、超音波内視鏡検査、腹部CT検査、注腸検査などがあります。

胃がんの病期(ステージ)

病期とは、がんの進行程度を示す言葉で、胃がんはI期(IA、IB)、II期(IIA、IIB)、III期(IIIA、IIIB、IIIC)、IV期に分類されます。
病期は、がんが胃壁のどの深さまで入りこんでいるか(深達度)、リンパ節に転移があるか、離れた他の臓器に転移があるか、この3つの要素から分類されます。病期は、治療法や予後にも深く関係します。

図6 胃がんの病期(ステージ)分類

            「国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス」から抜粋
http://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/diagnosis.html


胃がんの治療方針

胃がんの治療は、手術(外科治療)、内視鏡治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが中心になります。
胃癌治療ガイドラインにおいて、病期に基づいて推奨される治療法が示されています。

図8 胃がんの臨床病期と治療

       「国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス」から抜粋
http://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment_option.html

胃がんの手術(外科治療)


胃を切除する範囲は、がんのある部位と深達度、悪性度から決定します。胃切除と同時に、胃周囲のリンパ節転移やその可能性のあるリンパ節を取り除くリンパ節郭清(かくせい)や、胃や腸などの消化管を縫合して、新しく食べ物の通り道をつくり直す消化管再建も同時に行います。
代表的な術式として、胃全摘術、幽門側胃切除術、噴門側胃切除術があります。
内視鏡治療の適応とならないⅠ期の早期胃がんには、腹腔鏡下手術が行われることが増えてきました。腹腔鏡下手術は、腹部に小さい穴を数カ所開けて、専用のカメラや器具で手術を行う方法です。切除範囲は開腹手術と同じですが、開腹手術と比べて傷が小さいため、体への負担が少なく、術後の回復も早いという利点があります。
当院では、胃がんの手術を年間50~60例施行しています。(外科手術実績ページ参照) 

早期胃がんに対する内視鏡治療

内視鏡を使って、胃の内側から胃がんを切除する方法です。切除後も胃が温存されるため、食生活に対する影響がほとんどなく、体への負担が少ない治療法です。
治療の適応は、早期胃がんでがんの深さ(深達度)が粘膜にとどまり、リンパ節に転移している可能性が極めて低い場合です。
切除方法には、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や、特殊な電気メスを用いてがんの部位を粘膜下層ごと剥ぎ取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。
内視鏡治療で胃がんが確実に切除されたかどうかは病理検査で診断し、がんが予想以上に進行していた場合は、後日、追加手術が必要となります。

 

胃がんの化学療法

胃がんの化学療法(抗がん剤治療)には、手術と組み合わせて行われる「補助化学療法」と、手術で胃がんを完全に治すことが難しい場合で、がん自体の進行を抑えて延命および症状を軽減することを目標として行われる化学療法があります。
術後補助化学療法は、手術で切除できたと思われる場合でも、目に見えないような微小ながんが残っている可能性を考慮し、再発予防を目的として行われる治療です。適応となる病期はII期とIII期の患者さんで、S-1という抗がん剤を手術後1年間内服することにより、5年生存率が約10%向上することが証明されています。
S-1の主な副作用は、食欲低下、嘔気、下痢、口内炎、流涙、爪が黒くなる、白血球減少、貧血などがあります。
進行・再発胃がんに使用する薬剤は、S-1、カペシタビン、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、塩酸イリノテカン、ラムシルマブなどの抗がん剤が単独または組み合わせて用いられます。
胃がんの10~20%では、「HER2(ハーツー)」と呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関与しているため、HER2検査が陽性の場合は、分子標的薬のトラスツズマブを併用した化学療法が行われます。
化学療法の副作用は、人によって程度に差があるため、効果と副作用をよくみながら行うことが大切です。

胃切除後の症状について

胃切除をすると、胃の機能が損なわれるため、ダンピング症候群と呼ばれる不快な症状が起こるほか、体重減少も避けられません。
「胃を切った方の快適な食事と生活のために」(胃外科・術後障害研究会編)という小冊子を読まれることをお勧めします。
http://www.jsgp.jp/pdf/citizen/booklet20131120v1.pdf



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